先日、マンション管理組合の総会がありました。 これは、理事ではない住民の方へ年間の活動報告と、来季の活動内容を説明するとても大事な会議です。
総括すると、物価が上がっていることは皆さん肌で感じているので問題ないのですが、その**「スピード」**に対する感覚には大きな温度差があるようです。
管理費や修繕費など、負担となるものは安いに越したことはありません。 しかし、いざ修繕が必要になったとき、「予算不足で直せません」では済みません。 かといって、余裕を持って集金すれば毎月の家計が苦しくなる。
「どうなっているんだ?」と不安になる住民の気持ちもわかりますが、ボランティアである理事会役員に、世界情勢や物価の乱高下までコントロールする責任はありません。
そんなピリピリした空気の中、その矛先(ほこさき)の一部が、あろうことか私(管理人)に向かってきました。 今回は、そこで私が直面した「理不尽な指摘」と、そこから学んだ60代の仕事術についてお話しします。
60代の仕事は我慢の連続?総会で受けた理不尽なクレーム

総会の席で、ある住民の方が細かいところまで突っ込んできました。 管理会社への不満もあったようですが、話の流れで私の「掃除の仕上がり具合」にまで飛び火したのです。
「あそこの掃除が甘いのではないか」 「もっときれいにならないのか」
私は一介の管理人ですので、その場で責任を問われることはありませんでしたが、正直、腹の中では煮えくり返っていました。
「そんなに気に入らないなら、管理会社を変えるか、管理人を変えればいいじゃないか!」
心の中でそう叫びました。 指摘された場所は屋外で、契約上「月に1回」の掃除箇所です。雨風にさらされれば、掃除した翌日には汚れることだってあります。
- いつもピカピカに保つなら、毎日掃除する契約に変えるしかない。
- でも、そうすれば私の拘束時間が増え、当然管理費(委託費)は上がる。
- 別の専門業者を入れたとしても、やはり管理費は上がる。
「お金は出したくない。でもサービスは最高級にしろ」 そんな矛盾した要求を突きつけられたようで、私は久しぶりに、この仕事を辞めてやろうかとすら思いました。
クレーム対応の分かれ道。「開き直り」は仕事を失うリスク
その日から2〜3日、私は寝付きの悪い夜を過ごしました。 頭の中で、総会での反論シミュレーションが止まらないのです。
- 「契約通りの回数はこなしています!」
- 「これ以上の品質を求めるなら、コストアップが必要です!」
- 「今の契約金額でそこまで求めるのは無理です!」
どれも**「正論」**です。間違っていません。 開き直って相手を論破することは簡単です。しかし、ふと冷静になったとき、自分に問いかけました。
「で、論破してどうするの?」
正論で相手を黙らせたとして、その後の職場(マンション)での居心地はどうなるでしょう? 「融通の利かない頑固な管理人」のレッテルを貼られ、最悪の場合、契約更新のタイミングで「あいつは使いにくい」と切られるのがオチです。
私はここで、ハッとしました。 怒りに任せて「辞めてやる」と思う一方で、**「60代の自分に、今の仕事があることのありがたさ」**を忘れていたのではないか、と。
すべてを否定されたわけではない。たったワンポイント、掃除の不満を言われただけだ。 ここで事を荒立てて職を失うより、何か「工夫」で乗り切れないか?
仕事の道具を変える「小さな工夫」がクレーム対応の正解だった

私は考え方を変えました。 「契約だからこれしかできない」と線を引くのではなく、**「今の条件の中で、もう少しだけ結果を変える方法はないか?」**と。
そこでおこなったのが、**「掃除道具を変える」**という小さな工夫でした。 掃除の回数(時間)は増やせませんが、道具を変えることで、同じ時間でも汚れの落ち方が変わるかもしれません。
結果はどうだったか。 不思議なもので、私が新しい道具を使って試行錯誤している姿を、住民の方はちゃんと見てくれていました。
汚れが落ちたことへの満足感もあったでしょうが、それ以上に、 「自分たちの意見を聞いて、すぐに行動してくれた」 という事実が、住民の方の感情を「不満」から「信頼」へと変えたのです。
以前は冷ややかだった方が、すれ違いざまに 「管理人さん、いつもありがとうね。大変だね」 と、同情にも似た励ましの言葉をかけてくれるようになりました。 コミュニケーションが増え、以前よりもずっと仕事がやりやすくなったのです。
60代からの敵を作らない生き方。クレームを味方に変える

今回の件で、私はひとつの**「悟り」**を開きました。
若い頃のビジネス現場では、「契約厳守」「仕様書通り」が絶対であり、それ以外やらないことが正義だったかもしれません。 しかし、私たちのようなシニア世代が地域や現場で働くとき、求められているのは**「マニュアル通りの対応」+「大人の融通(工夫)」**なのです。
- 事を荒立てて、正論で勝っても、職場の敵が増えるだけ。
- 無理のない範囲で工夫をして、相手の顔を立てれば、味方が増える。
「契約通りにしかやりません!」と突っぱねるのは、AIやロボットでもできます。 そこで感情を飲み込み、知恵を絞って「道具を変えてみる」といった人間臭い対応ができることこそが、60代の私たちが現場で生き残るための最大の武器になるのではないでしょうか。
もし今、職場の理不尽な要求やクレームに腹を立てている同世代の方がいたら、一度深呼吸してみてください。 「開き直り」の前に、「小さな工夫」の余地がないか探してみる。 それが、ご自身の居場所を守り、長く愛されて働くための秘訣かもしれません。
